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労働問題Q&A

従業員のミスによる損害を本人に負担させられますか?

 若手従業員の指導をしていたベテラン従業員が、若手従業員の手つきを、悪例として再現してみせていたところ、高価な什器を落として破損させてしまいました。ベテラン従業員には若干申し訳なく思いますが、他の従業員への示しもあることから、損害をそのベテラン従業員に賠償させたいと思いますが、可能でしょうか。

 従業員の過失などによって発生した損害の賠償を、当該従業員に請求することは法的には可能です。

 ただし、事業の性格・規模、施設の状況、業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の予防・損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度で請求できるとされているのが一般的です。

 労基法では労働契約を誠実に履行しなかった場合に、違約金額や損害賠償額をあらかじめ定める契約を禁止しています。しかし、この規定は、金額をあらかじめ定めることを禁止したものであって、現実に生じた損害賠償を請求することを禁止したものではありません。

 つまり、使用者が現に発生した損害の賠償を請求することは労基法に反するものではありません。

 一般論としては、従業員が使用者に故意・過失によって損害を与えたものであれば、民事上、使用者は従業員に対して債務不履行あるいは不法行為に基づく損害賠償を請求することは可能と考えられます。

 ただし、損害がたとえ従業員のミスにより発生したとしても、無条件に全額従業員が負担することになるわけではありません。

 使用者が従業員に損害の賠償を請求し認めれた代表的な裁判例では、損害賠償額の算定に際しては、①事業の性格・規模、施設の状況、②従業員の業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の様態、③加害行為の予防・損失の分散についての使用者の配慮の程度、④その他諸般の事情を勘案し、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、従業員に損害賠償を請求することができる(茨城石炭商事事件)と判示されています。この事案については、損害額の4分の1が限度とされています。

 このように、従業員への損害請求については、使用者との関係において相当の配慮がなされべきでことが分かります。

 会社としても、社内秩序維持の面から必要とのお考えのようですから、ベテラン従業員の立場や若手従業員への指導中という事情にも配慮し、どの程度負担してもらうかを話し合ってみたらいかがでしょうか。