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労働問題Q&A

経歴詐称による懲戒処分は

学歴や職歴を偽って入社した後、発覚したら、すぺて、懲戒解雇事由として認められるのでしょうか。また、年齢については、どうでしょうか。

1 判例の考え方は

 硬化クロームエ業事件(東京地裁判決、昭和60 5 24)の判例にもとづいて説明します。

 本件は、この会社ではメッキ係社員は高卒以下の学歴者しか採用していないのに、当該社員が大学中退者であるにもかかわらず、高卒と偽って採用されたことが懲戒解雇事由にあたるか否かを争ったものです。

 判決では次のように述べています。

 一般に企業が労働者を採用するにあたって履歴書を提出させ、あるいは採用面接において経歴の説明を求めるのは、労働者の資質、能力、性格などを適正に評価し、その企業の採用基準に合致するかどうかを判定し、採用後の労働条件、人事配置などを決定する資料とするためであるから、当然のことである。

その反面として、企業に雇用され、労働契約という継続的な契約関係に入ろうとする労働者は、経歴について質問を受けたときは、真実を告げるべき「信義誠実の原則」上の義務がある。

 しかし、あらゆる経歴詐称が懲戒解雇事由にあたるというのではなく、経歴詐称のうち「重要な経歴の詐称」があった場合にのみ懲戒解雇事由となる。

「重要な経歴の詐称」というためには、原則として、それにより本来与えられるはずのない賃金、職種を取得するといった企業秩序を侵害した事実が必要である。

 本件の場合は、当該社員は本来従業員になりえないのに学歴詐称により従業員たる地位を取得したものであるから、前記でいう「重要な経歴の詐称」にあたり、懲戒解雇事由になる。

 

2 結論は

  従来の判例をみると、経歴詐称のうち、次の①、②に該当する「重要な経歴の詐称」が懲戒解雇事由となっています。

 ① 本来、その者は従業員の採用基準に該当しないのに、経歴(学歴、職歴、年齢他)を偽って採用基準をクリアーし、採用された場合

 ② 経歴を偽ることにより、本来そのものが得ることのできない地位、職種、賃金等を得ていた場合

 なお、[重要な経歴の詐称]に該当する事案が発覚した場合は、懲戒解雇の事由に該当するのみでなく、各企業の就業規則で一般的に規定されている「重要な経歴の詐称により会社の信頼関係が失われたとき」に該当するため、普通解雇の事由にもなります。