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労働問題Q&A

懲戒処分の対象となる非違行為のあらましは

懲戒処分の対象となる非違行為についての各企業の就業規則の規定は、全般に広範囲で包括的な表現となっています。

 しかし、裁判例は、具体的事案について、就業規則の広範な文言に該当する従業員の行為をそのまま懲戒事由にあたるとは判断せず、労働者保護の観点から限定的に解釈しています。事例は次のとおりです。

 

1 無断欠勤による懲戒処分は

 無断欠勤は単なる労働の不提供と手続き違反にすぎず、それが職場の士気に大きく悪影響を与えるなど就業規則、職場秩序を乱したといえる程の場合に、はじめて懲戒事由となります。

 例えば、プレスエ場の作業員が6ヵ月間に24回の遅刻と14回の欠勤を行った事案(1回を除きすべて事前届出なし。上司の繰り返しの注意、警告にもかかわらず改善なし)では、就業規則の「正当な理由なく遅刻・早退・欠勤が重なったとき」の規定を適用しての懲戒解雇を有効と判断しています(東京プレスエ業事件、横浜地裁判決)。

 

2 業務命令違反による懲戒処分は

 業務についての上司の指示・命令、時間外労働・休日労働・出張・配転・出向の命令、所持品検査命令等に違反した場合が、これに含まれます。

 これらの命令違反についての懲戒処分が有効であるためには、①使用者の命令が労働契約の範囲内の有効なものであること、②労働者が命令に服さないことにつき、とくにやむをえない事情がなかったことが必要です。

 

3 職場規律・秩序違反による懲戒処分は

 上司、同僚への暴行・暴言、横領、背任、会社の物品の盜取・損壊等は、明白にこれに該当します。

 また、就業規則で、会社構内での政治活動、演説、集会、はり紙、ビラ配布等を禁止したり、許可制にしている場合の規定違反について、最高裁は、職場内での従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立、抗争を生じさせる恐れがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたす恐れがあるとして、懲戒処分の対象になるとしています(電電公社目黒電報電話局事件、最高裁判決)

 

4 信義誠実義務違反による懲戒処分は

 判例は、重要な経歴(最終学歴、職歴、犯罪歴)の詐称は、労働契約上の信義誠実の原則に違反することなどから懲戒事由になるとしています。

 また、私生活上であっても、会社外での会社攻撃ビラの配布は懲戒処分に該当します。会社の重要な秘密をもらすことも同様です。

 

5 兼職禁止違反による懲戒処分は

 判例は、兼職許可制の違反について、会社の職場秩序に影響したり、会社に対する労務の提供に支障のあるものについては懲戒事由になるとしています。

 具体的には、競業会社の取締役への就任、労務提供に支障をきたす程度の長時間の二重就職等が該当するとしています。

 

6 私生活での非行による懲戒は

 判例は、これについて、事業活動に直接関連を有するもの、その企業の社会的評価の著しい失墜をもたらすもののみが懲戒事由になると、非常に限定しています。深夜酩酊して他人の家に侵入し、住居侵入罪として罰金刑に処された従業員に対する懲戒解雇を無効とした事案(横浜ゴム事件、最高裁)等があります。