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労働問題Q&A

うつ病による長期休職後の復職についてどのような点に留意すべきでしょうか

「心因反応」という診断で2年間休職していた従業員が、主治医の「軽作業なら就労可能」という診断書を持参し、復職したいと申し入れてきました。
しかし、完治しているわけではないので、従前の営業業務(外勤)へ復帰させるのは当社としても無理だと認識しております。
そこで、内勤事務での簡単なパソコンへの入力作業に従事するという条件で復帰してもらおうがと思っていますが、このような取扱いに何か問題はあるでしょうか。また復職させる場合に、どんな点に留意したらよろしいでしょうか。
 傷病による休職あるいはその後の復職について制度を設ける場合は、休職事由や休職期間、休職中の賃金、復職させる場合の条件などについて、従前の業務や傷病の状況などに応じた具体的な内容を就業規則、労働協約等に定めておくのがよいでしょう。そしてまず、就業規則等に則って客観的・公平に処理することが求められます。
 しかし、実際は症例は千差万別であって、規則等に形式的に当てはめることは困難であり、復職させるかどうかは、主治医の診断や産業医等の意見などを参考に個々に判断する必要があります。

 休職とは、従業員を労務に従事させることが不能または不適当な事情が発生した場合に、雇用関係を維持したまま一定期間業務への従事を免除または禁止することをいいます。
例えば、病気や負傷による「傷病休職(病気休職)」、刑事事件で起訴された場合の「起訴休職」、公務への就任、留学などによる「自己都合休職」などさまざまなものが考えられます。
 しかし、休職について労基法は何も定めておらず、どのような事情がある場合に休職とするのか、復職の条件や方法はどうするのか、休職期間中の賃金を補償するのか、といった休職制度の具体的な内容については、基本的には各企業において、就業規則や労働協約等で定めるところに従うことになります。

 ご相談のような傷病休職の場合の規定では、休職期間中に回復(治癒)すれば休職はそこで終了し、従前の業務へ復帰するのが通常です。また、会社で定められた休職期間が満了しても回復せず、労務の提供ができなければ、多くの場合自動的に退職または解雇となるのが一般的です。要するに、休職制度は、労務提供義務を一定期間免除し、解雇等を猶予するものであるということができます。

 一般に、休職後の復職の条件としては、傷病が「治癒」したこととされています。復職にあたり、従前の業務へ復帰(原職復帰)できる程度に回復することを要するとする例が、かつては多くみられました。 

 しかし、最近の裁判例では、原職復帰が困難な場合でも、特に職種限定の契約でなければ、現実に配置可能な業務があれば復職を認め、必ずしも原職復帰を要しないとする傾向がみられます。
 例えば、特に職種の限定がなく、他の軽易な職務であれば従事することができ、現実的にも配置転換が可能であったり、当初は軽易な職務に就かせれば、程なく従前の職務を通常に行うことができると予測できる場合は復職を認めるのが相当であるとしたものがあります。
 したがって、このような裁判例の趣旨からすれば、原職復帰が可能な程度には回復していない場合も、従前の営業業務よりも内勤事務が軽易で、配置できるということであれば、復職を認めることも可能と考えられます。特に精神疾患の場合には、リハビリ勤務や時間短縮など、使用者には、必要に応じて相当な配慮が求められます。

 ただし、復職させるにあたり、気を付けなければならないのは、復職させるかどうかの判断に先立つ必要な対応です。
 つまり、本人からの申出があった場合にせよ、本人が「治癒」したかどうかの判断や復職を認めるかどうかの判断は、原則として会社ということになりますが、本人からの申出があっただけでそのまま復職させてしまうと、回復が十分でなかった場合などは、傷病が再発したり、症状が悪化することも考えられます。
 そうしますと、使用者は労働契約に付随して従業員の安全・健康に配慮すべき義務を負っていると考えられるところ(労働契約法5条、民法415条)、安易に復職させて再発・悪化させる結果になれば、健康管理義務に違反するものとして会社の責任が問われることにもなりかねません。
 そのため、通常は、主治医の診断書を本人に提出させたり、産業医等の意見を踏まえながら、復職の可否を客観的に判断する場合が多いようです。
 実際にも、復帰後に病気が再発したケ-スで、会社の責任が認められた事案も存在します。