働き方改革関連法改正による時間外労働(36協定)

◆2019年4月より順次施行さる働き方改革関連法による残業時間の上限規制により、36協定の様式が変更され、36協定締結要件である労働者代表の適格性も厳格に適用されます。

法定労働時間を守るのが原則であり、時間外・休日労働は本来、法律違反です。

しかし労使協定である36協定の締結・届けを要件として、時間外・休日労働を認めたものです。

36協定が締結されたことは、労働者の代表者が時間外・休日労働に同意を与えたことを意味するからです。

「労働者が同意をしたのだから、時間外・休日労働は法律違反だが、法律違反として扱わないようにしよう」

これが36協定の効果であり、この効果を免罰的効力といいます。

「本来なら法律違反で罰せられるはずの使用者が罪を免れる」という意味です。

したがって、36協定の締結・届出により、法定労働時間を超えた労働が適法になるわけではないことは、注意を要します。

あくまでも、法律違反は法律違反とした上で、労働者の同意を条件に、使用者を罪に問わない扱いとしたのです。

36協定で時間外、休日労働の定めをしても、その協定で定めた限度時間を超えれば、労基法違反となり、第119条により特例を除いて「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の処罰の対象になります。

ただし、限度時間を超えて労働させることが見込まれる等、臨時的特別な場合、労使で協議して、「特別条項」を記載した36協定届けを作成提出することは可能です。

◆今回の改正では、その臨時的特別な場合についても上限が設けられました。

①「月100時間未満(休日労働含む)」、「年720時間以内」です。

ただし、臨時的特別な場合を協定するには深夜労働の回数を制限するなど、一定の健康確保措置が義務づけられました。

なお、これからの時間外労働では、本当に「臨時的特別な場合」にあたるのかどうかも、監督署の指導事項になってくる可能性があります。

改正に伴い36協定の様式も変わっており、これまでよりも細かく記載する必要があります。また通称「36指針」というものも策定され、指針にもとづき36協定の内容について行政指導されるようになります。

36協定の過半数代表者の選任については労働基準法施行規則の第6条2に定めがあり、現行においては以下の2つの要件を満たすものでなければならないとされています。

1 労働基準法第41条第2項に規定する監督又は管理の地位にある者でない事

2 労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施

  される投票、挙手等の方法により選出されたものであること

  • 2019年4月より、2の要件に「使用者の意向に基づき選出されたものではないこと」という要件が追加されます。

この背景には、過半数代表者を選出するに当たり、会社が指名するなど不適正な取り扱いが見られることがあります。

なお、研究開発の業務は今回の上限規制の適用除外となります。

工作物の建設、自動車の運転業務、医師なども当面(施行日から5年間)は適用除外となっています。

◆実労働にも上限

36協定に定めることができる上限とは別に、新たに実労働にも上限がもうけられました。

たとえ協定の定めた範囲内であっても、「月100時間」、「2~6ヶ月平均80時間」を超えて働かせてはなりません。(いずれも休日労働含む)。 これら36協定で定めた時間、実労働のいずれか1つでも超えた場合は違反となります。