新規作成時の注意ポイント

常時10人以上の労働者を使用する事業場(法人単位ではない)は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出る義務があります。(労働基準法89条)

違反すると30万円以下の罰金が科されます。 

この場合の労働者には、正社員のほか契約社員やパートタイム労働者等すべての者を含みます。

たとえばパートタイム労働者のように勤務の様態等から通常の労働者と異なった定めをする必要がある場合には、通常の労働者に適用される就業規則とは別にパートタイム労働者に適用される就業規則を作成する必要があります。

尚、就業規則で定めたことは労使双方を拘束することになりますので、労務コンプライアンス(法令遵守)やリスクマネジメントが必要なことはもちろん、その内容は常にその事業場の実態にあったものとする必要があります。

法令や服務規律等の遵守事項は時とともに変わっていくのが普通ですから、就業規則を作成した後も必要に応じて見直しを行い、労務トラブル等が発生した場合、あらゆる問題に即対応でき会社を守る経営戦略型の就業規則を作成・変更することをお勧めします。

労働基準監督署が受理したからといって、内容がすべて合法であるということを担保したものではありません。

監督署は形式がそろっていれば一応受け付けます。

審査の結果、法律違反や労働協約違反があれば監督署は就業規則変更命令を出せることになっていますが、実際にこの命令を出すことはまれです。

通常は会社を呼び出すか、立ち入りによる監督指導により、是正勧告又は指により改善させています。

是正勧告・指導で多い事項は、割増賃金(労働基準法第37条)、時間外労働(労働基準法第36条)、労働時間(労働基準法第32条)による違反です。

使用者は、就業規則の作成または変更について「労働者の過半数を代表する者」の意見(同意までは必要ない)を聞かなければなりません。

「労働者の過半数を代表する者」の要件は次のとおりです。

① 労働基準法41条で定める管理監督者でないこと

② 使用者の意向によって選出されたものではないこと

 具体的には、使用者の指名などによる一方的な方法ではなく、投票や挙手

などによる民主的な方法で選出されていること

使用者は、就業規則を作成又は変更した場合、労働者に周知しなければいけません。

労働基準法106条の厚生労働省令で定める方法は、次のいずれかにあげる方法となっています。

① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること

② 書面を労働者に交付すること。

③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

④ 労働契約法7条通達による実質的周知

就業規則が法的効力を有するためには、従業員代表者の意見聴取、労働基準監督署への届け出までは要せず、労働者に対し、①から③までのいずれかの方法により周知していることが客観的に判断、認められることが重要な要件となります。

周知の意味は広く知れ渡っていること、または広く知らせることです。

また④のように労働者の大半が就業規則の内容を知ることのできる状態に置かれていたと認められたら、実質的な周知の措置がとられていたと判断される可能性が高くなります。

会社と各労働者との労働条件を定めた労働契約書や労働条件通知書等の個別契約に対し、周知による就業規則で定めたことは会社と労働者双方を拘束する包括契約になります。

*事業場で周知させていた場合には、就業規則はそれが合理的な労働条件を定めている限り、経営主体と労働者との間の労働条件はその就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められる。当該事業場の労働者は、就業規則の存在及び内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受ける。(昭和43年 最高裁判 秋北バス事件)

 「就業規則」は「労働契約書や労働条件通知書」の内容を補う重要な書類です。

労働契約法12条は、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効になった部分は、就業規則で定める基準による」と定めています。

労務コンプライアンスやリスクマネジメントが必要なことはもちろん、その内容は常にその事業場の実態にあったものとする必要があります。

法令や服務規律等の遵守事項は時とともに変わっていくのが普通ですから、就業規則を作成した後も必要に応じて見直しを行い、労務トラブル等が発生した場合等、即対応できることが重要です。