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労働問題Q&A

使用者が従業員に対して行う懲戒処分が有効であるためには、どのような要件を満たすことが必要かを教えてください。

 これまでの判例により、その懲戒処分が有効であるためには、次の5つの要件をすべて満たしていることが必要であるとされています。

 

1 相当性の原則

 懲戒処分の対象となった非違行為と、処分の重さとのバランスがとれていることが特に重要です。例えば、1回の無届欠勤を理由に懲戒解雇を行ったりすると、「懲戒権の濫用」であるとして裁判で無効になります。

 裁判例において、多くの懲戒解雇の事案が、懲戒事由に該当する事実があることは認められているにもかかわらず、その行為や被処分者に関する諸般の事情を考慮すると処分が重きに失するとして無効とされています。

 

2 罪刑法定主義

あらかじめ、就業規則か労働契約書、労働協約に、懲戒の事由や種類、程度を明確に定めておき、事案が発生した場合には、その規定のとおり処分を行うことが不可欠です。

 労働基準法では、10人以上の労働者を使用する事業場に、「制裁の定めをする場合においては、その種類および程度」の記載を義務づけています(同法第89条第9号)。

 また、労働者を採用する際の労働条件の明示事項(労働条件通知書の記載事項)にも「制裁に関する事項」が規定されています(同法第15条、労働基準法施行規則第5条第10号)。

 

3 不遡及の原則

 「遡及」とは、過去にさかのぼることです。社員の行為があった後で就業規則等に懲戒処分の根拠規定を定め、過去にさかのぼってその規定を適用し、処分することはできません。

 

4 一事不再理の原則(二重処分の禁止)

 1つの非違行為に対して、例えば、まず訓戒の処分を行い、後で出勤停止にするといった二重の処分はできません。

 

5 適正手続き

  処分手続きが就業規則、労働契約書や労働協約で定められている場合は、その手続きを厳守することが不可欠です。

  特に懲戒委員会等の審議を経ることになっている場合は、これを守ることが必要です。

  また、重大な処分(懲戒解雇、降格、出勤停止等)を行う場合には、社員本人に弁明(説明、言いわけ)の機会を与えることが必要です。